やなまか

Open App

朝日の光が起こした奇跡だった。
彼が、アランが振り返り手を伸ばしていた。
申し訳なさそうな、苦悶の顔。
「アラン!!」
彼は2年前に、大量の民間人を殺したとして、天界に無かったものとして消された。そして私は何千年続けても終わらないかもしれない輪廻の仕事を課せられたのだ。

彼の声を忘れかけてきていることにぞっとして何度も思い出そうとして。人間の記憶の曖昧さに愕然とした。忘れるはずがないと思っていたのに。

私たちは家を亡くした。どこに行けばいいの。

破壊の神にしかすがれなかった。仕方なかったんだよ!!

「消さないで!!」
何のために生きていくのか。理由さえも奪わないで。
匂いと骨格と声と手のひらが一瞬蘇る。朝日の温かさをかき集めるように大地に蹲った。どうか消さないで。それさえあれば生きていけるんだから。

10/2/2023, 11:55:19 AM