弟との記憶で、あたたかい気持ちになるような思い出が、どこかにあるはずなのに、ちっとも拾えない。
今日は仕事で、その間も気をつけながら記憶の糸を下へ下へ下げて行ったけど、分からなかった。3年半も一緒に暮らしたのに、楽しい思い出がひとつもない、なんて事はまずあり得ない。必ずどこかにキラキラが…
一緒に、笑ったこととか、話したこととか、手を繋いだとか、歌ったとか、…あっあはず。
大きな銀杏の葉をもらった時、わたしは何て応えただろう。「おねぇちゃん、」って、呼ばれた時、どんなふうに返事したっけか…
自分の事が、なんにも、
思い出せない。
だけど、
母と養父が結婚すると決める前、
お試しでお互いの家に、泊まったり泊まりにきたりしていた。弟も施設から一時帰宅して、4人で家族お試しごっこをした。
その時、養父のアパートの近くに、雑木林があって、弟と木の実を集めたり、落ち葉を踏んだりして遊んだ。弟は自然が好きな子だった。わたしが見つける事ができないような、不思議な形の葉を見つけて来て見せてくれた、
正直言うと、
その時の、家族ごっこの方が楽しかった…
これからみんなで暮らすんだ、というワクワクした気持ち。お父さんが出来るんだという、誇らしい気持ち。みんなで、ひとつの部屋に布団をギッチギチに重ねて敷いて、ゴロンゴロンして。布団に潜った時の安堵感と足をパタパタしたくなるような、嬉しい気持ち。
なのに、
何が、いけなかったんだろう。
何が、間違ってたんだろう。
暮らしてみなければ分からない…そんな事が、たくさんたくさんあり過ぎた…………………
ただ、それだけ。
わたしの、
記憶を遡る時は、辛いことが起こった時。
そこから、
楽しい事や、
大切な事を探したい、
見つけ出したい、…そう願う時。
なぁんにも、あったかいものが見つからない…そんな事は今まで一度もなかった。
母と養父の言い争いが始まると、わたしは必ず鼻血を出した。『やめて、やめて、やめて、やめて…』そう念じると、鼻血が出た。本番の家族絵図は、そんな事ばかりを思い出してしまって、
今日はくたびれた。
養父はわたしに、
何も言葉を残してくれはしなかった。
「言葉少ない人だったけど、
それが優しい人だと思えたんだ…」と、母が言っていた。
わたしの心のさみしすぎる場所にポツンと、『おねぇちゃんに、』そんな声だけが残ってた。…ごめんょ、消し、去ろうとしてるし、忘れ、去ろうとしてる。
それは、…
わたしだって弟に酷い事言っていた、
と、いうことなんだ。
2025/02/01
痛みだけを感じてる。
2/1/2025, 11:24:52 AM