「ほんっと頭くる!何回言えばわかるのさ!」
「分かってくれない方が悪いだろ!」
変わらない喧嘩。私達は付き合って約2年。毎日のように喧嘩している。
「いつまでも支えられると思わないで!出ていく!」
「ちょ、おい!なあ――――――」
恋人の言葉を無視し、外へ出る。…少し歩いて振り向くも、姿はなかった。
「…少しは追いかけてくれてもいいじゃない。」
彼は、よく飲み会へ行く。仕事終わりは毎回行くのだが、今日は女性が多い部署の人達と飲みに行ったらしい。スマホを見た後、連絡先に新しく女の名前が3~4人くらい連なってた。浮気を疑っているわけではない。ただ、ふらりとどこかいってしまいそうで不安なのだ。
「もう…なんでよ…」
海の見える居酒屋。店主にはいつもお世話になっている。大体喧嘩した時はここに来るからだ。
「どうした〜嬢ちゃん?今度は何で喧嘩したんだい?」
「…女の連絡先が増えてて、不安になった。」
「そうかいそうかい。どうだ、一緒にツマミでも作るかい?」
「…お言葉に甘えます。」
店主が厨房に向かった時、電話が鳴った。その音を聴き裏へと店主は消えた。
「カレシさん、こっち来るってよ」
「は?本当に?」
「ああ、すごい慌てていたよ。外に出ていたらどうだい。2人分、ツマミ作っとくよ。」
「…はーい」
店を出ると、戸に着いていたベルがなった。
――――――違う。彼の自転車の音だ。
「蓮之!またここにいたのか!」
「東吾…うん。また来たの」
どうしても眉間にシワが寄る。不安でしょうがない。そんな感情が消えないのだ。
「……毎日言ってる事だけどよ」
「うん」
「俺はお前しか愛してないからな?」
「…わかってる」
「…そうか」
私は彼に言った。
「単品でその言葉ちょうだい。じゃないと無効ですよー?」
「…あーあーそうだったな」
彼は私を抱き寄せて言った。
「〝愛してる〟」
「……私も。〝愛してる〟」
お互い顔を見ながら微笑む。この瞬間はいつも安心する。2人で店に入って、テーブルに置いてくれていたおつまみを2人で食べて、色々な話をした。
作ってくれた店主は厨房でなにやら奥さんと話していた。
――――――――――――――――――――――――
「……あの二人、いつも喧嘩するけどなあ。」
「あら、どうしたんです?」
「すぐ仲直りするよな。すげーよ」
「ふふ。合言葉ならぬ、〝愛〟言葉があるんでしょう」
「なんじゃそりゃ」
「ちゃんとお互いを認め直す合言葉です。それが2人だったら、〝愛してる〟なんでしょう。きっと。」
「…そーかぁ。ま、オイラ達はあまり喧嘩しねえけどな。」
「喧嘩する程仲が良いって言いますよね」
「…そこは喧嘩しないけど仲が良いってことで…」
「あはは、安心して下さい。ずっと、私はあなたと過ごせて幸せですよ」
「それは…俺のセリフでもあるぜ」
10/26/2023, 10:27:56 AM