→短編・名前知らず
秋の恋は苦手。その人が好きとか関係なく、冬を前にして人肌恋しいだけかも、と気持ちにブレーキをかけてしまうから。つまり秋の恋のイメージは……――「冬籠りする動物の本能と一緒」
恋のイメージを訊かれて、思わず語ってしまった。変なヤツだと思われたかな? まぁいいや。どうせワンナイトだ。
「好き系の答え」
呆れもせず、レンは頷いた。彼のレンという名は、多分本名ではない。如何にもマッチングアプリ用の偽名。
「ここは巣。明日の朝までプチ冬眠しようよ」
そう言って、彼はベッドのシーツを大きくはためかせた。
降り掛かったシーツが私たちを頭からすっぽりと覆い隠す。
「レンにとって、恋ってどんな感じ?」
シーツに二人分の熱。シーツの下、彼は微笑んだ。
あれ? 彼ってこんな顔してたかな? 妙に可愛く見えるし、彼の体温に安心感を覚える。あー、これ、ヤバいかも。
レンは私と額を合わせて囁いた。
「今みたいな感じ」
ズルいな、私のイメージに乗っかったんでしょ、と私は口にしなかった。だって、私も彼の答えに乗っかろうとしてる。
明日の朝、本名を訊いてみよう、かな?
テーマ; 秋恋
9/22/2024, 7:14:00 AM