ヒロ

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仕事を続けていて目指すところを考えたとき、一番に思い浮かぶのは、入社した当初に店長を務めていた先輩の姿だ。
新人教育の担当をしてくれた先輩も別にいたが、目標のようなものを描くとき、どうしても必ずあの店長の背中がちらつく。

出勤してからの朝の準備に始まり、仕事終わりの清掃のポイント。
器具の扱いや、機械の電源を入れていく手順。
各工程での注意すべき点に、効率良く仕事を回す知恵。
患者さまとのコミュニケーションの取り方や、さらにはクレームが入ったときの対処の仕方まで。

そのすべてを手取り足取り教えてくれた訳ではない。
凛々しくてきぱきと仕事を裁き、間違いや苦情があれば、本人へ的確にびしっと指摘し情報共有。
私語や笑いも挟まない様を怖いと周りのスタッフは敬遠することもあり、斯く云う当時の私も注意される度に縮こまっていたものだ。
けれども、そうやって鋭く指摘してもらえることで次への対策を自分でもしっかり意識できたし、おかげで成長を重ねられたのも事実だ。
店長だから、という面も彼女に働いていたかもしれないが、オンオフはっきりさせてクールに仕事をこなす姿は今でも色濃く印象に残っている。

私の社会人歴も来月四月で早 十年となる訳だが、医療現場で働いていくその心構えと姿勢を示してくれたのは間違いなく彼女であろう。
残念ながら共に働けたのは一年と少しという短い期間であったが、今尚、事あるごとに思い出す憧れの人だ。
もしまたお会いする機会があれば、あの頃の感謝を改めて伝えたいものである。


(2024/03/23 title:015 特別な存在)

3/23/2024, 11:56:41 PM