世界の終わりに君と昼寝をする約束をした。
「寝ようと思って寝られるもの?」
「いやー難しいでしょ。だから睡眠薬用意してるよ」
拍手を貰い良い気になったところで、親友に薬を渡し、せーの、で同時に飲んだ。
やわらかい布団に横になる。
外の桜は満開で、快晴の春。だと信じたい。ふすまを閉めて、畳の部屋に閉じこもっているから外がどうだか分からない。最期の部屋に用意したのは、布団と時計とイルカのぬいぐるみ。
「このぬいぐるみでかいね」
「うん。いつも抱き枕にしてる」
ふーん、とイルカのヒレをふかふかと触る親友は、随分興味がありそうに見えた。
「可愛いでしょ。握って寝て良いよ」
と、伝えると親友はそれから暫しイルカを揉んだ後、「やっぱり良いや、ありがとう」と言って、代わりに私の手を掴んだ。
別に嫌ではないし、なんなら耐えきれない寂しさがあったから、私も素直に手を繋いだ。
「まぁ最期だからね」
「うん、最期だもんね」
親友の手は、とても温かかった。
これから冷たくなるって、そんなの知らない。この温かさは多分私の中で永遠になるのだろう。
ぎゅっと力を入れたら、握り返してくれた。
うん、今この瞬間が永遠だ。
/世界の終わりに君と
6/8/2024, 6:54:44 AM