【心の境界線】
昼休みの屋上。
風が少し冷えて、空がやけに広く見えた。
二人で並んで、コンビニのパンをかじっている。
話すでもなく、ただ街のざわめきを眺めていた。
「昨日、また寝坊したんやってな。」
「うるさい、ギリギリ間に合ったからええねん。」
くだらない会話に笑い合う。
言葉の端々に、互いの一日がにじんでいる。
昔は、人のあいだには境界があると思っていた。
どんなに仲良くとも、どこか踏み込めない場所があるんだと。
けれど、こいつといるとその線の存在を忘れる。
境がなくなってしまう。
何も言わなくても気づかれて、何も求めなくても支えられている。
そんな関係が本当にあるんだと知った。
部活でうまくいかず無言で帰った日も、こいつは何も聞かず隣を歩いた。
ただ、それだけで心が軽くなった。
心の境界線なんて最初からなかったんじゃないかとすら思ってしまう。
放課後、夕陽に照らされた校門を抜けながら彼が笑った。
「明日も同じ時間な。」
「もちろん。」
言葉より確かなものがそこにあった。
俺たちは今日も同じ空の下で笑っている。
11/9/2025, 12:50:00 PM