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「星空の下で」



窓を開ける。夜の特有の風が入ってくる。
カーテンが揺れ、自分の髪の毛も揺れる。
目に入って少し痛かった気もしたが、痛覚などとうの昔に忘れてしまったことを思い出す。

ベッドの上に置いてあったシーツを掴み、ベールのように頭に被せる。シーツは自分の足元まであった。

ずりずりと引きずりながら空いた窓に腰掛ける。チラリと下を見て見ると、、、特に何もなかった。


今夜はとても綺麗な夜空が広がっていた。
この場にこの部屋の持ち主…もとい彼がいれば、私を外へ連れ出して一緒に眺めようと言ってくるのだろうが。
生憎、それともタイミングが良かったのかもしれない、彼がいなければ、止める者はいないから。



外へ向かって上半身を傾けると、重力に逆らうこともなく落ちていく。だが地面にぶつかることはなく、地面から2メートル程の距離でぴたりと体は止まっていた。

腰からは、蝙蝠の羽のようなものが生えていて、パタパタと動いている。
空中で体を動かし、羽を動かしながら今よりも高いところへ飛ぶ。


星空の下で、一人の吸血鬼は佇む。
言葉は無く、ただそこに在るだけの存在のようだ。












一方その頃、部屋の持ち主は困惑していた。
トイレから戻ってきたら、窓は空いてるしシーツが無かったからだ。

4/5/2024, 12:14:49 PM