織川ゑトウ

Open App

『ループエンド』

未来、過去、現在、近未来、近現在?近過去?
僕は今、猛烈に悩んでいた。

学校が終わり、夏休みが始まり、
ちょうど積乱雲たちが顔を出し始める午前十一頃。
海開きもされ、皆が夏というきらびやかな季節に踊らせれ始める時。
キンッキンに冷えた麦茶を腹に蓄えながら

「あ~ぜんっぜん思い付かない!」

と、リビングで一人叫んだ。
宿題忘れ常習犯の僕は、先生が出した
「タイムカプセルを作って埋める」という宿題に頭を悩ませていた。
まぁ、元はと言えば夏休み前のこの課題を終わらせて無かった僕が悪いのだが。

普通に「いま元気?」とか「彼女いる?」とかでいいのかな。

「いや、でもワンチャン過去に届いたりも…する?」

そうすると「絶対に◯◯はするな」とか「過去の僕は気楽でいいな」とか?
書けば?いいのか?

「うーん…中々に難しくないかなぁ?」

タイムマシンとかあったら直接言えるし便利なんだけどなぁ。

「あー眠い…ちょっとお休み~」
申し訳程度にひんやりとした畳が心地よく、僕の体をくすぐり、夢の中へ誘う。

夢の中、目が覚めた。不思議な空間に居た。

「ここは……」
「お、君も起きたね」
「どぅっどぅうぇい!?誰よその女!」
「なんで起きてすぐそのセリフなんだい…」

誰かが話しかけてきたと思ったら、
なんだか僕と似た顔立ちの好青年が僕を見つめていた。

「ううん…中々に僕と似てイケメン…?ちょっとムカつくなぁ」
「何言ってるんだい。心外だね。僕が僕を分からないとは」
「ううん……でも僕こいつよりイケメンだよねぇ?」
「おい」

話しを聞いているのかってスパッと頭を叩かれた。
…イケメン…イケメン…?てかこいつ僕が僕をって…

「えっ何未来の僕なの?」
「大正解」
「そりゃあイケメンだよねぇ」
「大正解」

何かコントみたいなのをやってしまったけれど、
どうやらこいつ、未来の僕らしい。

「なんでいるのよ!!この浮気男!!」
「やっぱり過去の僕は頭がおかしいね」

む。未来の僕に頭がおかしいと言われたぞ。

「乙女心で遊ぶんじゃないよ!!」
「さっさとそのキャラやめなさいな」

それより、と目の前のイケメンな僕は話し出す。

「僕が君に会いに来たのは君に知っておいてほしいことがあるからなんだ」
「…!わかった…また他の女と付き合うのね!この馬鹿男!」
「もういいって。んで、知っておいてほしいことなんだけど」

僕のボケを華麗にスルーし、僕は僕の話しに耳を貸す。

「君の家族、もうすぐ死ぬんだ」
「…?」
「君は生き残る」
「…!?」
「ついでに、君は大分過酷な人生を歩むことになる」
「…!!」
「…これを知った上でタイムカプセルの手紙を書いてほしい」
「…んじゃ、未来の僕はこれでおじゃまするね」

そう未来の僕がいった瞬間。バッと起き上がり、目を覚ました。
なんとも酷な別れ方をした。すこしだけ言って帰ってくなんて…効率厨め。

「にしても、どうしたことかな~」

あんなこと言われちゃったけど、正直家族には死んでもらいたかったし…
うちちょっと複雑な家庭だからなぁ。死んでもらった方が、後々いいんだよなぁ。
少しサイコパスっぽく聞こえるかもだけど、うちは本当に家族って感じじゃないし。

「その選択は、正しいか」

突如、頭の中に未来の僕の声が響く。

「そういえば未来の僕、なんか辛そうな顔してた」

親のことを殺した未来の僕かな?
どちらにせよ、未来の僕がストレスで死んでしまっては困る。

「よし!決めた!」

勢いよく紙に文字を書き出し、庭の木の下に埋める。

「また。会えたらいいなぁ」

まぁいいや、間違えたんならまたタイムマシン使って忠告すればいいし。
冷える地中の紙には

「生きろ」

ただ、その文字だけであった。
小さな少年が頼りにするにはあまりにも細すぎる綱であった。

お題『もしもタイムマシンがあったなら』

お気づきのお方もいらっしゃるかと思いますが、実はこの少年、何回も繰り返してます。過去と未来。そこの部分を考えてみてからもう一度読んでみてください。効率厨だと、あそこで何故おもったのでしょうかね?

織川より
この物語には関係ないのですが作品読み返してハートをまたつけてくれたお方がいらっしゃるようで。有り難うございます。作品制作の励みになります。
それから、私が投稿するのは水曜、土曜~辺りに限定されると思いますので、これからも何卒よろしくお願いいたします。

7/22/2023, 4:21:52 PM