【七夕】
「願い事、決まった?ねね、書いた?教えてー!」
幼馴染のあいつが聞いてきた。
「言わねぇよ。書いたとしても教えねぇし」
ぷい。顔をそらしながら返したが、それでもあいつは
「あたしはねー、ふふん、……じゃん!」
と話しながら『お姫様になりたい!』と書かれた短冊を見せてきた。
丸い字で書かれた願い事の近くには、ハートマークやらキラキラやら、これでもかと言わんばかりに描かれている。
そもそも聞いてないのに。
思わず鼻で笑うと、あいつは怒った。
泣かせちゃ駄目よ、という声が遠く、遠くなっていく。
次第に景色も白く──
─あぁ、またこの夢だ。
七夕になると、いつも見てしまう。
自分の気持ちを隠さずにいれば良かった。あいつに伝えれば良かった。
短冊代わりのメモ紙に「あいつに会えますように」と書き…、ぐしゃぐしゃに丸めてゴミ箱へ入れた。
この願いはもう、叶わない。あいつはもう、一足先に天の川にいるのだから。
7/7/2024, 2:26:10 PM