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筆にしたたり落つる墨に、ことばは塗りこまれてゆく。ひかりへと、隙間をぬうて手を伸ばしました。あわくにじんだ淡火に、そう、と、かざしました。ときはたてど、はぐるまに、とめ具のほどこし。静止画のまま、しずやかに息をするのです。ゆうげんな語らいになぜ、ままならないのかを、かべに、背なかあずけて見あぐ。さわさわとゆれる葉すれにこころをあずけ、はばたきたい。かささぎのほそやかなあしが、爪さきをすこしひたらせ、緩まんにあるくのどかな風景と、しぜんとあわさり、ひとつになれるのなら。なやみさえやわく、とぶのでしょうか。ああ、けれども、停たいしたさなか、ますぐに佇むあなたに恥じまいと、奮いたつのは愚かしく、はれやかなのでございます。腰かけた古椅子はずいぶんと、おとしをめされました。ねじをまき、つよいほねを分けた、すがたの若わかしさ。和菓子ふたつ、みっつ、ほおばるのちに、あさく、ふかく刻まれた、なめらかなしわへ礼をつたえる。かかさま、おばさま、みとどけてくださったのね。ぼくはじきに杖をつくり、あらたな持ちてを探します。それまでは、とびらの鈴にここちよさを感じながら、めをひらいて、おはなししましょう。あす、とびきりとろけるマーマレードをあけますから、こころはずませてね。マイ、レディ。かがやかしい、きたる日へ。こもるこえと、みどりゆたかな、そのさきへ。

11/15/2025, 12:54:33 PM