300字小説
処理業者の怪談
これはコロニーの遺体処理業者に伝わる話だ。
宇宙開発黎明期、試験コロニーに住む一般住人を募集した。抽選で決められた住人は規定内で個人所有物を一つだけ持ち込むことが出来た。
ある男は亡くなった妻の髪を使った人形を持ち込んだらしい。やがて男は亡くなった。男は自分と共に人形を処分することを望み、人形は遺体カプセルに入れられた。
コロニー内では遺体は処理機に掛けられ、有機物としてリサイクルされる。業者が処理前の確認の為、カプセルを開けたとき……
「扉の人形が納まった位置に小さな手で掻いたような傷があったんだとよ」
「……人形はその後どうなったのですか?」
「さあ……」
先輩は棚に飾られた日本人形を見て肩を竦めた。
お題「一つだけ」
4/3/2024, 11:56:39 AM