「姉ちゃんはさ、明日世界が終わるなら何か願う事とかある?」
「は? しらなーい」
俺からの質問に雑な答えを返してきた姉。
テレビをつけては、姉は定位置であるソファにごろんと寝転がった。
適当にチャンネルを変えては、今人気のあるイケメン俳優が出ていたバラエティ番組を見つけると、さっき俺をチラ見していた視線とは違い、キラキラした目でテレビに映るイケメンを見ていた。
「えっというか、何でそんなこと聞いてくんの? 何かの予言でも信じちゃった?」
「違う。 ただ、クラスのみんなが昨日やってたテレビの影響で今日盛り上がってたんだよ。 だから何となく聞いてみただけ」
「ふーん」
やたらつまらないと言わんばかりの顔をされた。
なんだよ、予言信じててほしかったのかよ。
「アンタはなんて答えたのよ?」
「えっ……いや、へっ平和的な……?」
「ふーん、平和か。 まぁ、いんじゃない? 平和なのは何より~」
なんかまた適当な言い方な気もするけど、俺の答えに対して変に茶化したりしてこない姉を持って俺は良かったな、とは思う。
友達の話を聞いていると、よく否定されたり、からかわれたりして喧嘩することが多いみたいだが、ウチは変にお互いのことに対してあまり突っかからないから喧嘩もおそらく少ない方だろう。
ある意味平和だ、こういう平和を俺はずっと望んでるのかもしれないな。
世界が終わるなら、家族とこんな普通の生活がまたできる所に生まれて過ごしたい。
うん、学校では何となくで答えてたけどこれだな。
「ねー、お腹空いたからちょっとお菓子買ってきて」
「いや自分で行けよ」
「イケメンから目が離せないの! 超忙しい!!」
でもこういう所は普通に腹立つ。
弟をパシリに使いやがって……。
はぁ……仕方ない、今回は答えをスッキリさせてくれたお礼に買ってきてやるか。
そんなこと本人には絶対言わないけど。
「あとジュースもよろしく~」
「はいはい……」
【お題】明日世界がなくなるとしたら、何を願おう。
5/7/2022, 4:02:01 AM