「君と出逢って、」
五月の坂道をのぼると、光のつぶが跳ねる。
さらさらと吹き抜ける薫風が、
記憶の端っこを、やさしくなでていく。
足元では、クロが楽しそうに鼻を鳴らしている。
ときどき立ち止まって、
空を見上げる仕草まで、
いつのまにか私に似てきたみたいだ。
君と出逢って、
世界の輪郭は少しだけ、やわらかくなった。
何でもない一日を、
大切に、静かに、積み上げていこう。
透明な水が、
コップの底に溜まっていくように。
「クロ」と呼べば、
振り返るその瞳のなかに、
私はたしかな、今日の幸福を見つける。
5/5/2026, 3:28:57 PM