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眠りにつくのが怖いのだという。
底なし沼に沈んでいくように、夢の世界へ落ちていくのが怖いのだという。
僕はそれが嫌いではなかった。
しかし、その感覚をつかめずにいた。
恐怖を覚えるよりも先に睡眠への欲があった。
僕はうまく眠ることができずにいる。
眠れないことが恐ろしくてたまらない。
だれもいない暗闇にひとりぼっちになるのが恐ろしいのだ。

だから僕たちは同じベッドに潜り込んだ。
取り合った手は離れることなく朝を迎える。
君をひとりぼっちにしないように。
僕がひとりぼっちにならないように。

7/14/2024, 7:56:30 PM