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『裏返し』

私の友人は言う。
「あなたの『優しい』はムカつく。」
どうやら、私の「優しい」という純粋な褒め言葉の中に、何か煽りのような意味を感じるらしい。これは恐らく、私と友人の間柄だからこそ、素直な褒め言葉が煽りに聞こえてしまうのかもしれない。けれど、人は結構そうやって、言葉の向こう側__言葉の裏側にある意味を探しているように思う。
言葉に限った話ではない。私たちは二面性をもつものと生きている。私たちの顔や言葉にも裏表がある。なんだか嫌だ。漠然と、素直に生きられる世界がよかったと思う。どうしてわざわざ、見えないところまで考えなきゃいけないのだろう。
私が考える『私たち』は、中心に心があって、そこに繋がっているのが体。その中に顔があって、そこにある口から、言葉が紡がれていく。顔や言葉に裏表があるのは、心に何かがあるからだと思う。でも__心にもきっと裏表がある。相手の気遣いはありがたいけれど、どこかで厚かましく思っている、みたいなものが。私の場合、人に優しくされた記憶を思い出すと、ありがたかったと感じる反面、自分は相手に何もできていないじゃないかと自分の無責任さに呆れてしまう。挙句の果てには、涙が溢れて止まらなくなる。漠然としているけれど、ひとつの物事にプラスな感情とマイナスな感情が同時に現れるようなことがあれば、それはきっと『心の裏表』と言えるだろう。
心の中心の、もっと中心__心の底。裏表がないところは、きっとそこだけだと思う。ほとんど全ての日本人が自然を見て美しいと感じるように、人は底では一本の線で繋がれている。そこから、『私』を司る私の心が、私の思いを好きなように描く。素直に感じられるところがあるはずなのだ。大切な人に大切にされたら、それ以上の幸せはない。こう考える人が、世の中には多数なはずだ。それは、裏表のない心の底で、その状況を幸せに感じているからだ。何もやましいことを考えず、ただ「幸せだ」と笑えるのが、愛おしい。


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このカードを裏返しにすれば
あなたには違う文字が見えているんでしょうけれど
私には見えないの
たとえそこに『好き』と書かれていても

8/22/2024, 3:21:06 PM