#星に願いを
「あの流れ星、なんかおかしくない?」
誰かの悲鳴にも似た声を耳にして、ぼくは固く閉じていた瞼を開けた。
声は隣のベランダから聞こえてきたようだ。隣の人も、ぼくと同じように、夜空を見上げていたらしい。
空を見上げると、夜なのに変に明るかった。
「星が、落ちてくる……!」
ぼくは息を呑む。
流れ星――いや、あれはもはや隕石だ。恐竜を滅ぼしたのも、きっとあんな隕石だったのだろう。ぼくは笑う。お星さま、きっと、ぼくの願いを聞き届けてくれたんだ。
「やだ、ちょっと――」
アパート全体が、いや、街中が騒然とする気配を感じる。隣の人は、ばたばたと部屋の中に入っていったようだ。でも、ぼくは入れない。窓には鍵がかかっていて、ぼくを入れてはくれない。
ぼくの居場所は、どこにもない。
だから、ぼくは。
星に願いをかけた。
みんな、みんな、消えちゃえ。
4/25/2023, 11:40:51 AM