渚雅

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寂しそうな背中をしていた。

凛と、蓮の如く咲き誇る清廉な姿。人はそれを完璧な所作だと褒め称え、まさしく百合の花と そう口々に言い募る。

品のある立ち振る舞いは人目を攫い、一目で見惚れさせる魅力的な姿形を持っていたその人。確かに見目麗しく、動作も気品に満ちていた。


けれど──

否、それ故に。
その人は、酷く繊細に見えた。

喩えるなら、そう。人の形を模した精巧な球体人形のような。人ならざるものの持つ、欠けたるが故に持ち得る特有の存在感と空気。空間と切り離されたかのような僅かな距離感と排他的な透き通りすぎる瞳。熱を与えることも奪うこともない一定な温度。何処までも作り物めいていた。

分かり合うことのない。理解されることのない孤独。それに慣れきって、求めることすらせず、風を切るように清く正しく己を律してはまた距離が開けてゆく。そんな、色のない寂寥を纏ったお手本のような華。気高く咲いて美しく散ることを定められたかのように振る舞うその姿が、どうしようもなく寂しく思えたから。



「───」

あなたの色を知りたいと、そう願ってしまった 。


テーマ; 【透明】

3/14/2025, 9:25:42 AM