高く高く
私は天使として生まれた。
天使は自分の翼を真に信じた時に飛べるようになる。
私は自分の翼を信じることができなかった。
天界に生きるものにとってそれは、…「不信」は忌むべき感情であり、故に飛べぬ者は嘲笑の対象であった。
しかし、貴女だけはいつも隣にいてくれた。
「焦らなくていいのよ」と言ってくれた。
私はいつも貴女に救われてばかりだった。
そんな貴女が今、大罪によって翼を失っている。
貴女の優しさが犯した罪だった。
そして堕ちた貴女と共に落ちている。
貴女が行くなら私も、そう思った。
「…違う、違うだろう。今こそ舞い上がるのだ。」
私は翼に力を込め思い切り羽ばたいた。
飛べぬことによって貴女に救われていた私の翼は、貴女のためにあるべきだろう!
「ああ、自分の翼を信じられるようになったのね」
「はい、今度は私が貴女の翼です…!」
あんなに遠くなった天界が今度は段々近づいていた。
もっと、高く、高く。
今ならきっと、天界よりも高く飛んで行ける気がする。
10/14/2024, 10:58:41 PM