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マリンスノウとは

海中生物の由来した物質が結晶となり、海中に雪のような形で散る現象である。(googleの情報による)
鉱物的なその物体は美しい。しかしその正体は死んでいった魚たち…
美しさの中に隠されたものは、残酷な生物界の上下関係であり、食物連鎖の中途でしか無い。

生き物たちによって生まれたそれは
海底を漂い
深海に行き着いたと思えば
積もり積もっていった。

そこに居る魚たちの
餌食となって
後の命へと繋がる。

そこに確かに海がある
青かった海が。
しかし青はもうそこに無い
真っ白な海があるだけだ。

あちらこちらを泳ぎ回っていた魚たちは、時が進むにつれてその威勢をなくし、最終的には子孫繁栄すらも諦めていき、海は空っぽになってしまった。彼らはただただ深海へと沈んでいき、海底の地と化す。
世界が段々壊れていってしまう気がして、私は海に潜るのをやめた。


だが
もう遅かった。


私の体は崩れ行く。
海がしろさを増すたびに。
海は白いはずなのに
心は黒く染まりゆく。

記憶は徐々に消えていき
私はついに立つこと忘れた。
天使が私に微笑みかける。
「おかえりなさい」と。

記憶の海は死んだ。もう誰もいない。魚一匹残っておらず、かつての海の姿なんてどこにもなかった。
私は海を離れた。新たな心のよりどころを見つけたので、そっちに浮気することにした。広い花畑が広がる良いところだ。もうあの海に帰ることはないだろう。あそこが再び私の居場所になることはないのだから。

私の最期は
この海で迎えた。
私も魚たちとともに
それとなったのだ。

天使たちは私の手を掴んで此処まで連れてきた。
楽園であるのは確かだが
恐怖を何処かで感じた。
そして、
踏み入れては戻れない土地へと
入っていったのである。

5/13/2025, 12:47:56 PM