海汐かや子

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星空の下で、遥か遠くに見える真珠のような光を見る。空に散らばっている無数の星に囲まれて、わたしはこの時代に生きている。

今、この同じ時代に、同じ時間の中で生き、君と出会って心を通わせている今日を「幸せ」と呼ばずになんと表現すれば良いのだろう。

君の笑顔は宝物だ。
わたしの胸元に下がる指輪に誓った、あの日の想いは決して褪せることはない。

もし君の笑顔が誰かによって曇るなら――。

わたしは決して許さない。

「ねぇ、百合香さん。どうしたんですか、ぼぅっとして」

君が微笑みながら話しかけてくる。わたしは微笑み返して、星空を見上げる。同じ電車を待つわたしたちの間を、五月の生ぬるい風が吹き抜けていく。

「いいえ、ちょっと考え事を」

そうですか、と君は言う。困ったように耳たぶを触る癖。その手――薬指には結婚指輪がつけられている。わたしとの結婚指輪――ではない。君にはもう別の人がいる。わたしは君に手を出そうとは思わない。けれど、相手が君を少しでも傷つけたら話は別だ。

「なにか困ったことがあったら、わたしに言ってくださいね。わたしで良かったら相談に乗りますよ」

出来れば一秒でも早く、苦しみをわたしに言ってくれますように。

そんな願いを込めて、わたしは上司に微笑んだ。

4/5/2024, 1:51:45 PM