こんな夢を見た。起床したら、妙に体と気分が重たい。重い体を引きずりながらカーテンを開けると、物憂げな灰色の空と丘の下の町が見えた。空がこんな調子なら、町の皆も寝込んでいて店は開いてないだろう。今日の買い出しは諦めて一日寝ていよう。今日の予定を決め、洗面所へと向かう。顔を洗い鏡を見ると、自分の顔は空と同じ灰色だった。酷い顔色だ。換気をすればましになるかもしれない。窓を開けても気分と顔色は優れなかった。困って棚から金平糖入りの大きな瓶を取り出し、一つ口に放り入れる。少し気分が良くなった気がする。金平糖の甘さを味わっていると、何だか急に表が騒がしくなってきた。見ると、灰色の顔色の人々が私の家の前に列を成している。丘の下の町の人たちだ。
「どうしました?」
「風の噂で聴いたんだが、あんた『あれ』を持っているんだろ?少しでいいから分けてくれないか?気分が悪くて商売どころじゃないんだ。買い物来てくれたらサービスするからさ」
風の噂?もしかして換気した時に出ていった風が言いふらしたのだろうか。そんなこと今はどうでもいい。私は町の人たちに一粒ずつ金平糖を渡すことにした。幸い、大きな瓶にたっぷりと入っていたので、最後尾に並んでいた少年に最後の一粒を渡すことが出来た。しかし、少年は不満そうに言った。
「これじゃ足りないよ」
「足りてるよ、みんな一粒ずつなんだから」
「そうじゃなくて、空の分がないんだよ」
少年は空を指差した。
「そんな事言われても、君の一粒でおしまいだよ」
そう言った途端どこからか突風が吹き、頭上から悲鳴が聞こえた。見上げると街の人たちが空高く舞い上がり、それから少年も悲鳴を上げながら灰色の空へ消えていった。少年が見えなくなる頃には灰色の空は青空になり、誰もいなくなった町だけが残された。
2/26/2026, 3:52:22 AM