木陰

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死に場所は、世界の端がいい。

小さい頃から、人が好きだった。色んな場所に行き、色んな人と関わるのが好きだった。それでも最期は、他の誰でもない、自分自身と向き合いたいから。

飛行機から降りた私は、長い長い悪路を歩み続け、ついにただ1人で辿り着いた。そこはテーブルマウンテンと言われる奇妙な山の頂。山頂なのに地面が平らというのは奇妙だ。すぐ下には青く澄んだ海がある。
私は随分長く生きてきた。何十年経ってもこの身は老いず、12歳の体のまま300年が過ぎた。ありとあらゆる場所に赴いて来たが、これ程までに美しい景色を見たことがあっただろうか。

少し冷たい風が、頬を撫でる。私はやっと自然の一部に還れると感じる。どれだけ長く生きても、どれほど多くの知識や教養を得ても、やはり死には逆らえない。たとえ体が老いずとも、自分の死期くらい、なんとなくわかる。
長いようであっという間だった旅路の果てに、この絶景を見られたことに、私はひとり笑みを浮かべ、美しい世界を前に、ゆっくりと目を閉じた。

1/31/2024, 1:05:28 PM