信号は赤だ
あの日からずっと
赤なのだから、渡ることはできない
その信号は、青になることはない
それでも他に渡れる道はなくて、その場で立ち尽くしたまま
探せば他の道はあるんだろうな
ただ、俺にそれを見つける気力なんてものは残ってなかった
俺のことを、周囲は抜け殻のようだと感じていると思う
それは俺自身でも感じてることだ
俺には熱意を注いでいた夢があった
その夢を叶えるために、頑張ってきたんだ
ただ、それは潰えてしまった
夢破れた理由は、俺に才能がなかったとか、そういうことじゃない
才能の有無なんて知る前に潰えた
時代だ
俺の持つ夢は今の時代に求められない分野だった
どうやら、俺が夢を持った時にはすでに斜陽になり始めていたようだ
その時はそんなこと、知らなかったし、想像もしてなかったけど
俺自身に才能や実力がなくて、夢破れたなら諦めることはできた
けどこんな終わり方じゃ納得行かない
納得行かないところで、時代が変わってしまったら、俺にはどうにもできないんだけど
俺はこのまま虚しさを抱えて生きていくのかな
そんなことを考え始めて、鬱々とした気分になっていると、弟から真剣な顔で、話したいことがあると言われた
慎重に言葉を選びながら、弟は俺にあることを告げた
簡単に言うと、俺の新たな夢になるかもしれないものを見つけた、という話だ
俺は、そんなものはないだろうと思いながらも、せっかく弟が俺のために見つけてくれたのだからと、聞くだけ聞くことにした
それは、俺の今までの努力の成果を活かせる分野だった
ゼロからの始まりじゃない
俺のしてきた努力の延長線上にあるのが、それだったんだ
俺は一気に興味を持ち、弟とともに詳しく調べると、それにどんどん惹き付けられていく
その分野が俺の新たな夢となるのに、時間はあまり必要なかったと思う
心の中で、信号が青になるのを感じた
あとは、踏み出せばいいだけ
迷いはなかった
やっと、俺は自分の人生の歩を、再び進めることができたんだ
今度こそ、納得行くまでやる
その結果がどうなろうとも、後悔のないように、全力で頑張ろう
9/5/2025, 12:05:50 PM