【命が燃え尽きるまで】
中学最後の夏の夜に、僕は大切な幼なじみと蛍を見に川辺までやってきた。
僕の住むこの村は、大層な田舎で、毎年夏になると、田んぼでカエルが鳴き、森ではセミの大合唱、川には綺麗に蛍が飛び交っている。
そんな環境が嫌になったのか、幼なじみは東京の私立の高校に通うことに決めたらしい。
夕暮れと夜の境目の川辺に2人で座り、後ろから聞こえるカエルの声をただぼんやりと聞いていた。
「ねえ、蛍ってなんで光るか知ってる?」
突然の質問に驚く幼なじみ。
『え〜。暗闇で場所を知らせるんだったっけ?それか、求愛…とか?』
「う〜ん正解。」
『ロマンチックだね。』
「実はね、他にも理由があるんだよ。
相手に「近づかないで!」って伝えるために光ったりもするんだって。」
『そうなんだ。どれも同じ光に見えるけどね』
「ね笑」
話が途切れ、静かな時間が流れている。
静かと言っても、カエルはずっとゲコゲコ鳴いているし、蛍は止まることを知らぬ勢いで飛び交っている。
毎年夏休みの最後はここに来て、夏の終わりを感じていた。
それももう最後かと思うと、物悲しいというか切ないというか、言い表せないモヤモヤが心を占める。
「…東京いったらさ、もう蛍も見れなくなっちゃうね。」
『そうだね。』
「僕さ、ここで待ってるから。寮生活嫌になったら、いつでも帰ってきてね。」
『うん。気が向いたらね〜』
「なんだよそれ笑」
『笑笑』
「はぁ、僕が蛍だったら良かったのにな。そしたら、光って帰る場所を知らせるのに。」
『え〜。都会の光に負けて、見つけられなくなっちゃうかもな〜笑』
「そしたら、君のために命を燃やして更に激しく光って見せるよ笑」
『命が燃え尽きるまでは重いなぁ〜!!笑笑
ねえ、聞いていい?
その光は、求愛と拒絶どっちの光?』
「それはもちろん───
9/14/2023, 10:19:18 PM