小音葉

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重苦しい熱を吸って膨らみ続けた心
深く根を張って、ただ空を睨むばかりの老いた体
自らを運ばず滞る命
皺だらけの両手で芽を摘んで回る不毛
罅割れた廃墟を巡る列車は亡霊共を揺らさず
見下ろすこともなく、直向きに遥か天へ向かう
残された者の気持ちなど、慮る意味すらなかろうよ

車窓からいまだ忍び込む滑稽な恨み節
這いずるばかりの体たらくで何を誇るか
朽ちるを待つ古像に捧ぐ愛など一雫すら惜しく
乾いた彼等は今日も乾いたまま
飢えて恨んで勝手に嘆く
さぞ哀れな善良の面をして、巡る世界を嘆き憂う

一体いつから熱が冷めてしまったのか
刻む鼓動に宿るそれは失われてしまったのか

泣き叫ぶ襤褸の反響、何と愚かしいこと
愉快さも無く、新しさを拒む過去の民
風は彼等を置いて行く
遠く遠く銀河の果てへ去って行く
やがて列車が辿り着く頃、誰の記憶にも残らない
怨嗟を吐き続け溜まった池も
自ら塞いだ洞穴、そして最後に残った暗闇も
滞り無く塵と消える遺物でしかない
知らぬ存ぜぬ時代の魔法はとうに解けて
残ることを選んだ、枯れゆく花を置いて行くのだから

かつて美しく咲き誇った
その誇りだけを抱いて眠って欲しい

(風を感じて)

8/9/2025, 12:23:27 PM