いつまでも捨てられないもの
ちょうど一年前に彼と別れた。
別れた直後は毎日泣いていた。
だが、3ヶ月をすぎた頃くらいから、
週に一度になり、月に一度になり、数ヶ月に1度になり、
気づけば泣くことは無くなっていた。
最近は、思い出すことさえしていなかった。
やっと吹っ切れたんだ、そう思っていた。
今日は仕事も早く終わって帰宅し、シャワーを浴びて
気持ちよくベッドに入った。
安心して目を閉じようとしたそのとき、
LINEの通知音が立て続けに3回鳴った。
反射的に時計を見ると丁度21時になったところだった。
胸の当たりがギュッと締め付けられ、ズキズキバクバクしている、目が熱くなってきて鼻が痛い。
今まで忘れていたはずの全ての記憶が一瞬で
脳を駆け巡る。
時間に正確な真面目さ、必ず3つの文章で出来たあのあたたかいトーク画面、綺麗な薄茶色の瞳、長いまつ毛、笑った時の目尻のしわ、手の形、横顔、後ろ姿、優しい声、あの日みた景色まで。
私が去年毎日待ちわびていたあの音が、いつもの時間に鳴るその音が、私の耳の中でまだ鳴り響いている気がする。
ガンガンする頭を落ち着かせるために、必死に目を閉じた。
やっと追い出したはずの痛みがまた私を襲ってくる。
「お願いだから、出ていって。」
その言葉には今でも正反対の気持ちが混ざっていた。
メッセージを来ないようにすることもできたはずなのに、心のどこかでその音を今でも待っていた。
こんなに苦しいのにどうして。
一体あと何年経ったらこの気持ちを捨てられるだろう。
きっといつまでも捨てられない。
8/17/2023, 1:46:54 PM