8木ラ1

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「いやだ、っ!」
かすれた叫び声が室内に響く。私の肩は震えていて今にも崩れ落ちそうだった。

家に呼び出され久々のデートに胸が踊っていた。
数分前までは。
「愛してる。だから─」
何度も聞いた言葉。
突然別れをきりだした彼女に理由も問うもその言葉が何度も出てくる。
私は意味が分からなかった。
愛してるならこのまま愛し合おうよ。このまま旅行の計画立てたり手繋いで散歩したりしようよ。このまま一緒に死んでよ。
こんな時によって気持ちを上手く口に出せなくて余計に涙が溢れる。
「分かった、じゃあ正直に話すね。」
必死に涙を拭う私を見た彼女は話し出す。
「自分、他に好きな人出来たんだ。半年前から内緒で付き合ってたの。貴方よりその人を選びたいから別れてほしいってこと。分かった?」
私は言葉を失う。嫌味ったらしく言う彼女の顔は本気だった。その表情が胸につきささりさらに涙が溢れ始めた。嘘だ。嘘だと信じたい。その必死な思いで声を出す。
「前、私が心中しようとか言ったから?あゆみはそんな事しないよ。浮気なんてするひとじゃない。」
舌足らずな口で訴えるが彼女は黙りこくったままだった。

──────

彼女が私に心中しようと言った時は驚いた。
彼女はそんな人ではないと思っていたから。命を捨てようとするなんて事は私は却下した。

三日間考えた結果、彼女は辛い。それは私があまりにも無力、負担をかけていたから。今思えば彼女にたくさんの迷惑をかけてきた。「心中しよう」というのも彼女は私を好きだと愛してると思い込みたかったのだろう。
だったら、彼女が命を捨てようとするぐらい辛いなら別れよう。それが一番だ。

彼女には幸せに命を尽くしてほしい。
愛してるから彼女には生きてほしい。

だから
「─別れよう。この後デートだから。」
私を最低な人間として未来で笑い話にしてほしい。

【愛を叫ぶ。】

5/12/2024, 5:52:30 AM