まにこ

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「○○」
優しい声色の男は幼子にそっと麦わら帽子を被せた。父親らしい彼は帽子の上からわしわしと子の頭を撫でる。子どもは不思議そうにその帽子のつばを触っている。麦のざらついた感触を小さい指で楽しんでいるようにも見えた。
澄み切った青い空、ソフトクリームを散らせたような入道雲が夏を連れてきた。蝉たちが腹いっぱいに鳴き、家の軒先に吊るされた風鈴が涼しげに揺れている。
「そら、アイスキャンデーだぞ」
男はしゃがみこみ、袋を破ってオレンジ色した棒アイスを子どもに差し出した。とたんに花が綻ぶように笑う○○。嬉しそうにそれを受け取り、パクリと一口齧り付く。
嗚呼、今年の夏も楽しくなりそうだ。男はいつまでも、眼下で小さく揺れる麦わら帽子を見つめていた。

8/11/2024, 9:36:56 PM