るな

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母に管理されていた頃は、気づいたときにはクローゼットの中身が入れ替わっていた。トレンドに敏感でないと思われないように。いつだって母が気にしているのは季節よりもトレンドや流行だったように思う。
母に見放されてからは逆に、クローゼットの中身は一切変わらなくなった。リストカットの跡を隠すために、首の索条痕を隠すために、体重が落ちて骨の浮いた身体を隠すために。常に身体全体を覆い隠すような服を着ていた。
「来週から夏服なんだって!」
高校の制服に身を包んだ純が笑う。初夏に入り、気温の高い日も増えてきた。一日ごとに夏に向かっていく。純に似合う季節が来る。
「わたしも、夏らしい格好してみようかな」
隠し続けた傷跡は触れると確かな違和感はあるけれど、治療の結果もうだいぶ薄くなっている。
「海琳は綺麗だから、絶対似合うよ」
「ありがとう。純くんにそう言ってもらえるのが、一番うれしい」
週末はきっと、君のために衣替えをする。

10/24/2023, 12:10:35 PM