水平線を金色に染めて、太陽が顔を出す。
輪郭すら分からなかった人や車が、明るくなるにつれ服の色まで分かるほどになってきた。
意外と近くに他人がいた事に僅かにたじろぎ、後ずさる。肩がぶつかった方を振り返ると、同居人が晴れやかな表情で昇る朝日を見つめていた。
「――」
何の感慨も湧かない。
歓声をあげる恋人達。
手を合わせる老人に、シャッターを切る男。
彼等は広がっていく金色の光に心を動かされている。
この国ではあの光に神を見出す者もいるだろう。
そこまで大きな動きでなくても、何らかの波を起こす力があの光にはあるのだ。――少なくとも、彼等には。
「綺麗だね」
同居人がコーヒーを飲みながら小さく呟いた。
「そうだな」
彼が言うならそうなのだろう。それ以上何の感慨も湧かない。ここにいる何人があの太陽を本当に美しいと思っているのか。
「綺麗だけど·····」
彼が振り向く。
太陽を背にしたせいか、顔が見えない。
「それだけだ」
車に戻る彼の足取りは、どこか軽やかで。
何かに別れを告げたのだと、私は思った。
END
「日の出」
1/4/2025, 6:40:57 AM