『旅路の果てに』
この旅路の果てに、君は一体何を想うのだろう。
一足先に去った恩師への未練は、あの日の後悔は、無事に捨て去ることが出来たのだろうか。
いいや。きっと君は、それら全てを抱えたまま歩いていくのだろう。
それら全てに深い慈しみを持って、三途の川を渡るまでの長い長い時間を過ごしていくのだろう。
この旅路の果てに、君が想いを馳せる記憶。
その一欠片だっていい。そこに僕との日々が映り込んでいたのなら、僕はきっと、君と別れるその瞬間まで笑顔でいられるだろう。
「行こう」
振り返った君が、こちらに向かって手を伸ばす。
昇る朝日を背にして、君の黒い髪がきらきらと輝いている。
この旅路の果てに僕が思い出すのは、この光景なのかもしれない。いや、そうであって欲しい。
「そうだね。行こうか」
君の姿を、僕がずっと覚えていられるように。
シャッターを切る代わりに一つ瞬きをして、僕は君の手を取った。
1/31/2024, 10:39:38 AM