白糸馨月

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お題『花畑』

 いつのまにかどこかの草原にいたようだ。青空の下、あたり一面赤とか黄色とか青とかの花が咲き乱れていて、花びらが風に舞っていて、思わず目を奪われた。
 しばらく立ち尽くしていると、「おーい」と俺を呼ぶ高い声が聞こえてくる。
 振り返ると、まっしろなワンピースを着た嘘みたいに可愛い女の子がいた。
「君は?」
「私は花の妖精、ねぇ、一緒に遊びましょ」
 いつのまにか俺のちかくに来ていたのだろうか、彼女は俺の手を取ったかと思うとお互いに腕をつかんで、意味もなくあははと笑いあった。なんだか幸せだし、楽しい思いをしていた。

 肩を揺すられて目を覚ます。薄目をあけ、まばたきを繰り返す。ここは教室で、クラスメイトの視線が俺に集まっている。よりによって男しかいない。いつものむさ苦しい景色だ。
 教壇に立っていた先生が笑いながら
「おぅ、起きたか。幸せそうにウフフアハハ笑ってるとこ悪いが、教科書を読み上げてくれ」
 と言ってきた。その瞬間、クラス中が笑いに包まれる。となりの席のやつがニヤニヤしながら、教科書の読む場所を指し示してくれている。
 夢からさめた残念さと、それが周囲に伝わってしまったことによる恥ずかしさから感情がぐちゃぐちゃになりながら、教科書を読んだ。情緒が複雑になりすぎて内容が頭に入ってこなかった。
 それからしばらくの間、俺のあだ名が「笑い袋」になったのは言うまでもない。

9/18/2024, 3:43:28 AM