鶴づれ

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大事にしたい


 夏休みは田舎の祖父母の家で過ごしていた。
 あるのは海と山と少しの店、というような典型的な田舎だったけど、実家が都会にある僕にとっては未知の宝庫だった。
 そこで、ある男の子と女の子に出会った。すぐに仲良くなって、小学生の夏休みはずっと彼らと遊んでいた。海に飛び込み、山で虫を捕り、祖母にすいかをもらって三人で食べ、祭りの日には花火も見た。
 本当に楽しい、宝物のような夏だった。

 変わったのは、僕が中学に上ってからだ。
 サッカー部に入って、休日はほとんどなくなった。夏休みだって同じこと。ほぼ毎日学校まで自転車を漕いで、ボールを蹴る。試合がある日は自分が出してもらえなくても現地まで行く。祖母の家に行く時間はなくなった。

 練習終わり、自転車にまたがった時、よく彼らを思い出す。僕がいなくて寂しいと思ってくれるだろうか。それとも怒っているだろうか。彼らは優しいから、忘れられてることはないだろうけれど。
 もっと、彼らと過ごした時間を大事にしたかった。

9/21/2023, 3:34:44 AM