創作「恋物語」
「ふざけてるの?」
可愛らしい便箋を手に彼女は眉をひそめる。校舎裏に立つ女子の前には大人しそうな男子が一人。真剣な顔で彼女の言葉を待っている。
「要するに、あたしに惚れたってことよねぇ」
静かな迫力に圧倒されつつ彼はぼそぼそと何か言った。便箋に目を落とした彼女はふっと吹き出す。
「これ、『恋』が全部『変』になってる。あと、文法もめちゃくちゃね」
突き返された便箋に彼は絶望的な表情を浮かべてその場に立ち尽くした。片や彼女は優しい笑みで口を開く。
「この学校でダントツの文才を誇るあたしに恋文とは、あなた随分な度胸ね。気に入ったよ、書き直して来たら考え直してあげる」
彼の表情はわずかに明るくなった。だが、彼女は不敵な顔で彼を見つめる。
「なーんて言うと思った?もう二度とあたしの前に現れないで」
そう言って彼女は男子に背中を向け去って行く。残された彼は青ざめた顔で小さく震えていた。彼らの恋物語はここで一度終わりを迎えたのだった。
(続く)
5/18/2024, 3:52:23 PM