300字小説
年越し夜話
「大事な時計を無くしたんだ……」
大晦日。友達と飲んだ帰り道。私は住宅街の路地でべそをかいているウサギに出会った。
「文字盤に十二支の絵が描かれた、金色の懐中電灯。あれが無いと新年になれないよ……」
ああ、飲み過ぎて幻覚を見ているんだ。
そう思いつつも、放っておけなくて、私はウサギと一緒に時計を探した。
「あった!」
電柱の影に時計を見つける。
「間に合った! ありがとう!」
ウサギが嬉しそうに時計を受け取る。
「これで、新年になれる!」
針が十二時をさすと同時に
「良いお年を」
トンボ返りを打ち、その身体が緑色に変わり、大きく長く伸びる。
「あけましておめでとう!」
ウサギの変じた龍は身をくねらせて、夜空を昇っていった。
お題「良いお年を」
12/31/2023, 11:55:10 AM