(現パロ、モブ視点)
俺の友達の名前は『フォルテ』という。もちろん本名じゃない、そういうあだ名だ。
そんな俺の友人フォルテは、いつも四限が終わって三学年だから帰れるはずなのに、わざわざ弁当もってまで残って勉強をしている。
いつもは付き合わない。勉強するのもめんどくさいし、そもそも残るために昼飯買うのもめんどい。
でもその日は、どうしても明日頑張らなきゃいけない小テストと課題があって、家ではどうも集中力できないからと、仕方なく残ることにした。
「ってことで、一緒に勉強していいか」
下の学年なら昼休みと呼べる時間帯も残り十分となった頃、俺はフォルテに声をかけた。
「……一緒にいてもいいけど、僕は次の時間は勉強しないよ」
「しないのかよ。じゃあなんでいつも残ってんだ?
「いや、いつもはしてる。ただ、今日の曜日はしないだけ。一週間のご褒美って感じかな」
そう言って笑った。
チャイムが鳴って五限が始まる。フォルテは窓の外を見つめ始めた。
俺らの教室の窓からは校庭が見える。どうやら二年のクラスが体育のようで外で集まってラジオ体操をしている。
そのうちの一人に向かって、まるで愛おしいものでも見るかのような視線をフォルテは送っていた。
「……好きなやつでもいんの?」
「いるよ。とても好きな子」
俺の方なんか目もくれずに彼はそう言った。
一時間、彼は見続けたあと、チャイムがなって五限が終わったと同時に流れるような速度でテキストとノートを取り出して勉強を始めた。
俺は、クールなフォルテがあんな優しい笑顔をすることに驚いて全く勉強に手がつかなかった。
7/19/2024, 2:51:30 PM