ノンネム

Open App

「あなたの言ってる意味がわからない」

 そう言って彼女は顔をくしゃりと歪めた。
 僕はなにを返せば良いかわからず、ただうろたえるばかりで。
 そんな僕を見た彼女は、吐き捨てるように乾いた笑い声を出してから、小走りにいなくなった。


 何度目のやりとりだろう。
 男女問わず、僕のそばにいた人たちは皆、こんなやりとりを最後に姿を消す。

 姿を消すと言っても、この世からいなくなるわけじゃない。
 僕のいないところで誰かと楽しく笑ってる。
 僕がそこにいることを見ぬふりするだけ。
 僕のいる世界から、いなくなるだけだ。

 同じ別れと拒絶の苦しみを繰り返していけば、いくら鈍感な僕でもそろそろ理解してくる。
 はじめから僕たちは『一緒にいなかった』ことを。
 感動したこと、嬉しかったこと、信じたこと。
 この世で感じるすべての出来事が。
 僕だけかすりもしない、一致しないんだ、と。


 大切な存在のいなくなった場所を見つめて、愚かにも僕は、また思った。

「一緒に、いたかったんだ」



【 君と 】

4/4/2025, 3:42:14 AM