駆け落ち···無断で家を去り行く先をくらますこと。
なんて、辞書で引いてみる。僕は今、相談を受けている。「人殺したかもしんない」「たすけて」
そんなメールが届いた。クラスの、自分の席より2つ前なだけで、僕が恋心を抱いた子。
仲がいい友達よりも自分にメールとは、相当パニック状態に陥っているのだろう。
「どうしたの」「ドッキリとか?」
「そんなわけないこらやめてよ」
「どうしたいい?」
「どうしのう」
誤字もあるが読めないほどではない。
昔から、思ってたことがある。
「じゃあ、駆け落ちでもしてみる?」
彼女がいつか僕に恋をしてくれないかと。
「わるくないね」
...
やっほー。
...呑気だなあ。
そーかな?
そーだよ。
じゃあ早速、いこっか?
うん、どこ行く?
電車にでもいこうよ
...
こんなに、こんなに人は呆気なく死ぬものなのか。
電車に自分から飛び込んだ彼女を止められなかった。
「どうしのう」
メールの言葉がフラッシュバックする。
そっか、そういうことか。
真っ赤に染まった服からポシェットを抜き出す。
中にある真っ青な日記らしきものを開く。
綺麗にまとめられた日記だ。最後のページは一文だけ書き連ねられている。
「君と一緒なら、どこまでも。」
それは、僕が遠い昔、彼女に告白した時の言葉だった。
1/6/2025, 10:51:19 AM