「疲れた。」
そう口にした時、僕の足は止まった。
「この役立たずが!」
会社の上司からの罵声。僕は、すみませんと頭を下げた。原因が僕でなくとも、頭を下げる。それで丸く収まるならこれが最善だ。でも、頭を下げる度に、僕の人間としての価値も下がっていく。あぁ、子供の頃に憧れた大人は所詮こんなものか。ただの社会の操り人形に過ぎない。暗い気持ちのまま、今日も残業をし家に帰った。
「ただいま。」
返事は返ってこない。アパートの狭い部屋。そこで、僕は一人暮らしをしていた。晩ご飯を作ろうとしてもやる気が出ず、そのままベッドに入った。しかし、疲れているはずなのに中々眠れない。あぁそうか。僕の心はとっくに限界なのだ。体の疲れを忘れるほどに。
「疲れた。」
その言葉が頭を支配する。もう嫌だ。生きたくない。楽になりたい。
いつからこんなに辛くなったんだっけ。今までの人生を振り返る。そうだ。社会人になった頃からだ。今思えば、懐かしい。
〈社会は夢見る場所じゃない。夢を壊す場所だ。〉
そう書いた手紙を机の上に置いた。この狭い部屋で、僕の体が浮いたままだった。
6/4/2024, 3:02:25 PM