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ようやく終わった残業。疲れきった身体をギイギイ動かし、帰路に着く。
今日も明日も仕事三昧、最後に遊びに行った日なんていつだったか。
記憶を思い出そうとしてもそんなことに頭を動かす動力さえすっからかんで億劫になり、早々に放棄する。
少しでも早く寝て、明日に備えなければ。そうだ、明日はあの顧客に……なんてぐるぐるしている思考がピタリととまる。

「あ……夕飯」

テーブルに乗せられたそれは俺のために用意されたもの。お皿いっぱいに乗せられた黄色が味気ない部屋の中でまぶしく見える。
子供の頃からの大好物を前に、グゥゥと腹の虫が主張すれば、我慢する理由などどこにもない。
いそいそとそれを持ち上げ、レンジで温める。先程まで軋んでいた身体は油を差したかのように滑らかに動いた。
温まった皿を取り出し、ラップを剥がし、冷蔵庫から取り出したケチャップで好きな模様を描いてみる。
デザインが不格好なのは大人になっても変わらないがそんなことは気にならない。

「……いただきます」

両手を合わせ、スプーンを動かす。口に運び入れたソレにすぅぅ、と気持ちが華やいだ。

「……美味い……っ!!」

いくつになろうが、どんなに疲れていようが、味覚は子供のままで、変わっていないらしい。

大好物のオムライスは、いつだって俺のご褒美だ。

5/12/2026, 11:51:26 PM