とある恋人たちの日常。

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 新しい家、新しい部屋。これから一緒に住む家。
 全てが新鮮な気持ちになる。
 
「ごめん。これどこに置けばいい〜?」
「あ、はーい」
 
 大切な彼からの声に振り返ると、ダンボールを抱えて廊下を歩いてくる彼が見えた。そのダンボールには〝いま〟の文字。
 
「これは、居間に置きたいものなので、この辺りに置いて、ソファが届いたら開けましょう!」
「りょうかーい」
 
 彼はてくてくと歩いて指示に従ってくれる。
 予定が合わず、先に彼の荷物を入れてくれたので、手伝ってくれていた。
 
「ごめんね、あまり広い部屋を選べなくて」
 
 と言ってもワンLDKの部屋なのだから、ふたりで住むには充分だと思っていた。
 
「そんなことはありませんよ」
 
 彼のそばに寄り添い、その肩に頭を乗せた。
 
「その分、傍にいればいいと思います」
 
 ひとつ、間を置いてから彼が強く抱き締めてくれる。
 
「そうだね。そのための家だ」
 
 部屋が狭くても、ここは私の大切な場所になるんだ。
 
 
 
おわり
 
 
お題:狭い部屋

6/4/2024, 12:11:35 PM