〜色とりどり〜
一番乗りにくると冷えた空気が横を通っていく
勢いよく開けたドアの前で身震いをする
冬の美術室
暖房も何もつけずに一番乗りで来るといつもこうだ
今年の発表会と言うかコンクールのために先輩も後輩も同期も力を入れている
テーマは色
あやふやなテーマだ
私はこのテーマで絵を描くのに苦戦してるためキャンパスは真っ白
色とりどりのキャンパスが並んでいる
人がまだ来ない美術室はしんと静まりかえっている
油絵具の匂いや木材の匂いが絡まる
才能がないと散々言われたが頑張って続けた絵だ
コンクールには何回も出しているがひとつも賞を取ったことがない
「ん?おー相変わらず早いな」
「あら、一番乗りじゃない教室暖めててくれてありがとうね」
「先輩こんにちは!」
ゾロゾロと人がやってくる
「今年は優秀賞行けるかしら」
「行けんじゃね?」
「先輩なら行けますよ!才能凄いですし!」
優秀賞を取ること
私の目標はその先輩のように細かく綺麗な絵を描くこと
でもいくら模写してもいくら技術を学んでも書けない
「まだ真っ白ね、どんな作品を描きたいの?」
優しい先輩はよくアドバイスをくれる
細く綺麗な絵を描きたいと伝えると困ったような顔をされる、やっぱり私には無理なのだろうか
「貴方の絵のいい所は自由奔放に色を乗せていくところよ、他の人には出来ないような大胆さや迫力がある」
だからそこまで考えこまないでも自分の好きなように書いてみるといいとアドバイスを貰った
正直それでいいのか自分じゃ分からない
私の絵は大雑把でぐちゃぐちゃしている
自分の中では満足ができず1度絵を描くことをやめた
たくさん色を持っていたのにその時はグレー1色で何を混ぜても暗くなって言った
でも先輩の絵を見てからまた色が溢れ出してきた
色とりどりの景色を見せてくれた
そんな先輩のアドバイスだ、信じる意味はあるかもしれない
コンクールに出して2ヶ月程が経過した
結果はまだ届いていない
先輩は優秀賞を取れたのだろうか
私は1度でもいい入賞したい
「これ貴方の作品じゃない?」
審査員賞に載っていたのは間違いなく私の描いた
先輩からアドバイスを貰い描いた絵だった
「良かったわ、私も準優秀賞だった惜しかったけれどとても嬉しかったわ」
あれからも先輩の言った通り自分らしさの絵を描いた
コンクールに何度も何度も応募し賞をたくさん取っていった
その度先輩に褒めて貰えた
とても嬉しく心の中の色がまた溢れていった
嗚呼、楽しい
1/8/2023, 2:35:40 PM