謎い物語の語り手

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【約束】

「いつかまたここで会えるまで幸せでいて。約束だ」
そんな言葉で締められたありきたりな物語の小説。

本を閉じてため息を吐いた。どれもこれも同じ話。
続編が出る前に作者は亡くなったらしい。

この本の作者、戦地に赴く前に書いたのですって。
そんなドラマもありきたり。

こんな、私以外にもう誰に読まれているかも分からない古い古い時代の、誰の日記ですかって言いたくなるほどマイナーな小説を。

ドラゴンの騎士と許されないお姫様。
当時だって流行りもしなかったんじゃない?

物語はね、誰かに読まれなきゃお仕舞いなのよ。
永遠に開かれないカーテンの後ろで踊るみたいに。

私がこの本を古本屋で見つけなきゃ危なかった。
良かったわね。まぁつまらなかったけれど。

今いるこの場所はこの物語の舞台だったらしい。
騎士がドラゴンになって飛んでいった崖がこの場所。

はは、馬鹿みたい。ただの崖よ。
…でもそうね、続編、読んでみたかったかも。

お姫様は約束を守れたのかしら?
この物語の続きは作者が示している。

きっと、二人は永遠に会えなかったと。

3/4/2025, 11:59:16 AM