題 初恋の日
昔大好きだった人がいた。
小学校の頃大好きだった。
優しくて、かっこよくて、私に親切で。
だから私も彼が大好きだった。
低学年のときはいつも遊んでたけど、彼は途中で引っ越してしまっていた。
そんな彼が今眼の前にいる。
私が通う塾に入塾してきたんだ。
凄く偶然で、最初私は驚いて何も言えなかった。
だって・・・
だって・・・。
「男の子・・・じゃなかったの?」
彼が着ていたのはセーラー服。
紛れもないスカート。
てことは性別は女の子だよね・・・?
「あ〜久美ちゃん!久しぶり、ボク、女の子だよ、ごめん、誤解してたかな?」
一人称は、昔と一緒でボクだ・・・。
「ボク、男の子と遊ぶの好きでさ、言葉遣いも男みたいなんだけど、本当は女なんだよね。制服もほんとはズボンがいいんだけどね」
そう言って苦笑いする彼女を、私は目を丸くして見つめていた。
複雑な気持ち。
あんなに好きな人だった、初恋だったけど・・・。
男の子だったか・・・。
少し残念。
でもまた優しい彼・・・じゃない彼女と再会できて嬉しい。
本当に優しかったから。
それは性別を超えて、人間的に仲良くしたいと思わせるものだった。
「ううん、会えて嬉しいよ」
私は首を振って彼女に笑いかけた。
「これからよろしくね!また仲良くしてほしいな」
私の言葉に、彼女はニコッと笑った。
その笑顔に昔の面影を認める。
初恋のころ好きだった笑顔・・・。
「もちろん!」
私はチクッと痛む胸のかすかな痛みを感じながら彼女に笑顔で笑いかけた。
5/7/2024, 1:08:49 PM