冬至。

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「歳を取るとさー体力も無くなって物欲も無くなるんだって」
「へぇ」
「だからさー」
「うん?」
「そうなる前にお前をちょーだいよ」
にんまり目の前にいる男に笑いかけたら小気味よい音を響かせてあたまを叩かれた。
「痛い!!!なにすんのよ!!」
「人をモノみたいに言うからだ」
気持ちばかり上から見下ろすように冷ややかな目線を向けてくる。
「俺は本気だ!!!」
めげずにその手を取り握りしめると、思いっきり振り払われて鼻で笑われる。
「相変わらず冗談がお好きねー」
何その話し言葉…。
目が笑ってないし、怖い。
「…本気なのに」
本人に聞こえるか聞こえないぐらいの声で反論する。
目線を逸らしてしばらく何も言わないでいるとため息を吐く音がした。
「で、何か欲しいモノでもあるのか?」
「は…?」
思わず不意を突かれてその顔をまじまじと見返した。
「突然そんな事言い出すなんて何かあるんじゃないのか?」
彼の発言がしばらく理解出来なくてそのまま見つめる事となる。
そこまで真剣に捉えられるとは思わなかった。
適当に発言しただけなのにこんなに真に受けられると逆にこっちが戸惑ってしまう。
「ただの求愛行動ですが…」
「冗談はいいから本当のこと言え」
「いやだから…」
「なにか言いづらい事なのか?」
「だからね…」
何でこいつは普通はしっかりしてて器量もいいのにたまにこう的外れな方向に走っていくんだ。
特に俺の告白は全然こいつに響かない!!
「おれに出来ることなら協力するし…」
なんてなおも的外れな事を言い続けている。
「もういい。お前は何もしなくていいから黙っててくれ」
ちょっと気持ちを立て直すから待ってくれ。
俺のことを考えてくれて力を貸そうとしてくれるのは嬉しいしありがたい。
でもそんなものはいらないんだよ。
俺が欲しいのはそんなんじゃないんだ。
わざとやってるなら勘弁してくれ。



                (何もいらない)

4/21/2026, 10:15:43 AM