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『命が燃え尽きるまで』

どうも、おばんでござんす。
Y君からのLINEで召喚されまして。ええ、こちらに伺うようにと。

なんですか、命が燃え尽きるまでを見届けたいとか。ははぁ、よくわかりませんが、つまりは誰かの死に目に立ち会いたいと、そういうわけですかな?

ちなみに『死神』はご存知ですかね? ええ、そちらもですけど、落語の演目のほうの。人間の命の火を灯す蝋燭を交換する話なんですけどね。

あぁ、あそこの蝋燭、ええとアロマなんとかのやつですかな、太くて立派なもんですな。それにちっとばかし火を点けてこっちにいただけますかな、ええ、そう、そんな感じで。

この立派な蝋燭がアナタ様の命の灯火だとして、それをこの小さくて細い蝋燭、たまたまアタシが持ち合わせてたヤツなんてすが、ええ、これね、仏壇なんかの燈明に使う、中でも一番小さくて細い、女性の小指ほどもないやつなんですけどね、これにその灯火を、こう、こうして移し替えると。

さあ、これで終いです。
どうです? これ、この灯火が消えた時がアナタ様の命が尽きる時ですな。

え? 冗談なんかじゃありませんよ。こっちだってそんなに暇じゃありません。はあ、なにをそんなに怒ってるんですかな。命の燃え尽きるまでを見届けたかったのでしょう?

いいですか、冥土の土産にお教えしますが、自ら火を点けた蝋燭を死神に差し出すなんて、そんなこと、お巫山戯や冗談でもやっちゃいけませんよ。

最初に申し上げましたでしょ?
アタシは召喚されたのだと。

9/16/2024, 6:53:13 AM