ミミッキュ

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"意味がないこと"

「ふあぁ〜……」
 最近寒くなってきた上、今日は早めに終わらせる事ができたので、久しぶりに銭湯に来ている。
 髪と体を洗い流し、湯船にゆっくり浸かると気持ち良さに思わずため息じみた声を漏らす。
「あったけぇ〜……」
 そして当たり前の事も口にしてしまう。
 顔を上げる。視界に広がるのは、銭湯特有の形をした高い高い天井だけ。他の客も、いるにはいるが二,三人程度で、聞こえてくるのは桶を置く音と、泡を流すシャワーの音と、微かに足音。
 湯船の暖かさと少ない音数、情報の少ない景色。心地良さに顔を上げたまま、ぼーっと天井を見つめる。
 何もせず、ただぼーっと天井を見つめながら湯船に身を委ねているだけ。こういう《何もしない》時間が大切。
 ……けど、『あぁすれば良かった…』とか『こうしなけりゃ良かったか…?』とか、一人反省会するの、止めたい。
 いつもはシャワーだけで済ますが、その時も一人反省会しながらシャワーを浴びている。実は先程、髪や体を洗っている時も一人反省会していた。
──本当、止めたい。俺の方が年長で、経験値だって俺の方が上なのに……。
 ちゃぷ…、と口元までお湯に体を沈める。
 すぐに、はっ、と沈めていた体を跳ねさせ、元の体制に戻す。
──いやいや『止めたい』って思ったそばから、何また一人反省会してんだ、全く……。
 また湯船に身を預け、また顔を上げて、ぼーっと天井を見つめた。

11/8/2023, 1:15:59 PM