300字小説
理想の果てに
その国家は人類の英智を集めた最新鋭のコロニーを基盤に造られた。
『銀河の楽園』と呼ばれる理想郷。AIによる完璧な国家運営に手厚い福祉。誰でも無料で受けられる最新医療にあらゆる事故を想定した安全対策。危険な労働は全てロボットがやり、人間は心煩うことなく幸せに生活出来た、はずだった。
「……と、それが今はその残骸しか残ってないわけだが」
過去の遺物を調査する我がチームのリーダーが『楽園』と呼ばれた荒れ果てたコロニーの内部のデータを集めながら苦笑する。
「実際、平穏だったのは初めの数年で、後は国民同士の小競り合いが絶えなかったようですね」
「小人閑居して不善をなす、か……」
嘆きのぼやきが壊れたパネルに落ちた。
お題「楽園」
4/30/2024, 12:37:48 PM