泳ぐ鯉

Open App

目が覚めるまでに

何度も何度も口に出したのに、もうその名前を思い出せずにいる。覚醒しだす脳みそを心で押さえつけながら、貴方の名前を忘れてしまわないように、必死の思いで手を伸ばした。だけれど今の私に残っているのは、もがいた後の腕の疲労と渇いた喉だけだった。確かに出逢ったはずなのに、その記憶さえも朝靄と共に消えていく。夜になればまた出逢えるはずだと蜘蛛の糸のように希望へ縋る。私にはもう、夢を見ることしか残されていなかった。

8/4/2024, 4:40:39 AM